沖縄さんぽ

よみもの

地元紙(琉球新報・週刊タイムス住宅新聞)に連載していたものを掲載しています。

うちなー風景

2.石敢當に寄せた信仰心

石敢當古いたたずまいを残す集落を散策していると、家々をつなぐ小路の交わるところ、屋敷囲いの一角を切り取って造られた門横に、風格のある重量感あふれる石が置かれているのが目に留まる。

よくよく見ると「石敢當」という三文字が刻み込まれている。長い歳月、風雨にさらされてきたのであろうか、文字が摩滅し、判読しづらくなっているのが多い。  
道を直進し、その突き当たりにたむろするという悪鬼・悪霊(悪い気)の「ケーシ(返し)」として、石敢當を造立した先人たちの心遣いを今に伝えてくれる風景である。

これから見ても分かる通り、石敢當の造立のそもそもの目的は、悪い気が集落や家々に入り込むのを防ぐことであった。朽ち果てることを知らない堅固な医師に、人智の及ばない呪力を感じ、それを信じた先人たちの心情が偲(しの)ばれる。

沖縄に石敢當が伝わったのは14・5世紀ごろだとされているが、明確な年代はわかっていない。一見して古い時代に造立されたと思われるものは多いのだが、これらの石敢當には造立した年代が刻まれていない。残念ながら、それを知る手がかりがないのである。

近年、めったやたらと石敢當を取り付ける人が増えた。それが観光客の目にも留まるようになり、一種のブームを巻き起こしているようだ。その善し悪しは別にして、先人たちが〝自然の石〟に寄せた素朴な信仰心を忘れることがあってはならない。

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