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 今回から、具体的な事例を通してユタの功罪について考えてみる。まずは、「功」についてである。
 Aさん(女性)
 母子家庭のAは、こどものケガをきっかけにユタの元を尋ねる。最初に訪ねたユタは50歳の男、次に行ったのが70代の女、最後は初老のサンジンソウである。彼らのお告げは、いずれも似たり寄ったりで「観音」・「屋敷」・「井泉」・「墓」などにウガン(御願ー祈願すること)して亡夫を安心させるようにということであった。Aはその通りに実行し、心の平安を得た。
 Bさん(女性)
 結婚後、関節痛に悩まされるようになった。そこで姑の案内でユタの元を尋ねた。「ムートゥーヤー(宗家)を拝みなさい」というお告げであった。ムートゥーヤーの御願を済ませると、関節痛が治癒した。
 Cさん(女性)
 息子の戦死の報を受けたCは、いてもたってもいられず、いたたまれなくなってユタの元を尋ねた。2〜3人のユタを尋ね歩いたが、いずれのお告げも「息子は無人島に流れ着いて、生きている」ということであった。「無人島」そして「生きている」という文言がピタリと符合しているのである。ワラにもすがる思いであったCにしてみれば、どれほどの救いであったろう。もちろん確たる論拠のある話ではないが、胸をかきむしるような“痛み”をどれほど鎮めてくれたことか。結局、一時の気休めでしかなかったのだが、ユタのことばに一縷の望みを託して苦境を乗り越えることができたという。
 これらの事例から見るように、漠然としたものではあるのだが、ユタの中に、依頼者の話の中から実に巧みに何かを察知する感性的な能力、神々の世界や異界をさも見てきたかの如く話す話術、あるいは人びとの体内に流れるリズムと呼応して即興的に託宣する一種の詩的能力さえも、ユタの元を訪れる人びとは見ているのである。
按司とグスク
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