家の新築、墓の普請はもとより、病気・家庭の不幸や災難、旅行あるいは進学等々、身近に起こるあらゆる出来事に沖縄の庶民はユタの所へと出かけて行っては、吉凶を占ってもらう。
そこで、ユタの正体はいったい何ぞや?ということになる。研究者・学者の間でも意見の分かれるところでもあるのだが、ユタの所に出かけて行く庶民にしてみれば、彼らの提起する神学論争などあずかり知らぬことで、ただひたすらに、裡(うち)なる不安を取り除く“霊験あらたか”なことばを聴きたいだけなのである。虚実を絶妙に折り混ぜて、独特の口論でユタの口から発せられる“ことば”は、どんな良薬よりも効くというわけだ。
実際、ユタの口からいっぺんの淀みもなく流れ出すことばは、それを聴く者の心を完全に麻痺させ、思考停止の状態に追い込んでしまうのである。ワザにたけたユタは、人の心を読み、それをコントロールする術は精神分析医の比ではないのだという。
一般に「ユタ」は「呪術宗教的職能者」ともいわれるのだが、一口に言ってしまえば、“ことばの魔術師”といえるのである。
次回から、実体験を紹介しながら、ユタの世界に踏み込んでみることにする。